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島に眠る先祖 洋上慰霊 3世代参加断念の家族も

 北方領土の元島民らが船上から先祖を供養する根室港発着の洋上慰霊の7回目が4日、行われ、元島民7人ら23人が参加した。東京都の落語家木村吉伸さん(51)は、歯舞群島志発島出身で根室在住の父芳勝さん(87)と次男の3世代での参加を予定していたが、新型コロナウイルス拡大の影響で乗船を断念。岸壁から芳勝さんの出港を見送り「来年こそは必ず参加したい」と誓った。(北海道新聞釧路根室版2022/8/5)

 この日は国後島沖での慰霊。乗船前のPCR検査で陽性となると東京に戻れなくなる恐れがあるため、木村さんは息子の朋輝君(8)とともに予定した今回の乗船を断念した。「元島民の祖父と一緒に乗船した記憶は、大人になっても残るはず。子どもに自分のルーツが志発島にあると知ってほしい。次こそ必ず3世代で参加したい」と話した。

 木村さんは芳勝さんと2人で志発島を訪れたことはあるが、3世代での参加はなかった。息子を加えて参加しようと模索したが、ビザなし渡航新型コロナウイルスの影響で2020、21年と2年連続で中止に。今年はロシアのウクライナ侵攻により、渡航再開が見送られている。

 根室港に帰港した芳勝さんは「四島の島影が見えて、自然と涙が出てきた」と懐かしげに語った。木村さんは芳勝さんの表情を見て「島に渡れるのが一番だが、元島民と船内で同じ時間を過ごす洋上慰霊にも意味がある」と言葉に力を込めた。(武藤里美)