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「択捉島はるか遠い島に」 洋上慰霊で実感語る 直木賞作家・元島民2世 佐々木譲さん

 北方領土のロシア支配海域に入らない船からの「洋上慰霊」が29日行われ、直木賞作家で、択捉島の元島民2世でもある佐々木譲さん(72)が、叔母で元島民の正子さん(86)(札幌市)とともに参加した。佐々木さんは「択捉島ははるか遠い島になってしまったと実感」と感慨深く語った。(読売新聞北海道版2022/07/30)

 午前9時40分過ぎに交流船「えとぴりか」が根室港を出港。曇り空で、国後島は見えないが、納沙布岬に近づくと、水晶島貝殻島灯台が姿を見せ、同11時頃、 凪な いだ海上で慰霊式が行われた。下船後、「もうここまでしか島には近づけないんですね」と佐々木さんはくやしそうに語った。ドラマ「エトロフ遥かなり」の原作「エトロフ発緊急電」は、真珠湾攻撃時の択捉島が舞台となっており、父・正保さんの思い出話が創作のきっかけとなった。

 「引き揚げ者」と呼ばれた元島民と、ロシアからの侵略で国外に避難し難民となっているウクライナの人々とを重ね合わせ、佐々木さんは「向こうの島で生活して追放された。元島民らは引き揚げ者ではなく、難民なんですよ」と語気を強め、「改めてロシアをめぐる国際情勢の厳しさ、あまりにも非情なリアリズムを意識した」と語った。