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北方領土で「当時の話したかった」 洋上慰霊参加予定の元島民

 ロシアのウクライナ侵攻で北方領土訪問の機会が失われる中、元島民らによる「洋上慰霊」が23日から始まった。国後島出身の野口繁正さん(80)=札幌市=は「北方領土に行って、当時のことを話す機会がなくなった」と訴え、「何かやらなければ」との思いで慰霊に参加する予定だ。(時事通信2022/7/24)

 1942年に生まれた野口さんは3歳のとき、旧ソ連兵が侵攻した島から船で脱出。家族と共に北海道・知床半島東部に位置する現在の羅臼町に移った。その後、元島民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」に所属。80年代から返還活動を始めた。

 小学生や修学旅行生に語り部の活動を行う傍ら、ビザなし交流などにこれまで30回以上参加。経験がない若い人を交流事業に参加してもらうなどし、2、3世らを同連盟の活動につなぎ留めようと尽力してきた。

 だが、交流事業は2020年度以降、新型コロナウイルス禍で中断。さらに今年、ロシア側が事業停止を一方的に表明し、再開のめどは立っていない。洋上慰霊の際、慰霊の文面を読む野口さんは「北方領土に行って読むのと海の上からとでは思いが違う」と無念さをにじませる。

 同連盟によると、終戦直後、約1万7000人いた元島民は約5400人まで減少。平均年齢は86歳を超え、高齢化が進む。「元島民が動けるうちに、何とか墓参に連れていってあげたい」。こうした思いを胸に、8月4日に洋上慰霊に参加する。