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国後の2遺体、サハリンで引き取りへ 日ロ調整 知床・観光船事故

 オホーツク管内斜里町知床半島沖で小型観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故で、北方領土国後島で見つかった男女2遺体について、日本政府は26日、海上保安庁の船舶でロシア・サハリン南部コルサコフ港に引き取りに行く方針を明らかにした。ロシア側がコルサコフに遺体を移送する見通しで今後、引き渡し時期を早期に調整する。(北海道新聞2022/7/26)

 木原誠二官房副長官は同日の記者会見で、25日にロシア外務省からモスクワの日本大使館に対し、コルサコフでの引き渡しを希望する非公式の連絡があったと説明。「人道的な観点から一日でも早くご遺体の引き渡しを実現できるようロシア側と調整を進めていく」と述べた。

 遺体の引き渡し方法を巡り、日本政府は当初、国後島と北海道本島の中間線の洋上で引き取ることを打診したがロシア側が受け入れなかった。このため日本側は今月中旬、国後島かサハリンに日本の船舶で引き取りに行くなどの代替案を提示していた。

 複数の日ロ関係筋によると、日本政府は北海道本島との距離が近い国後島に、元島民が北方領土を訪問する「ビザなし交流」の枠組みを利用して船舶で引き取りに行く案を希望した。しかし、ロシア政府はウクライナ侵攻を巡る対ロ制裁への対抗措置としてビザなし交流を中断しており、島の入港には別の方法が必要と主張。主権問題によって調整が長期化する事態を避けるため、日ロ双方がコルサコフ案で折り合った。

 2遺体はいずれも5月に国後島西岸で見つかり、ロシア側のDNA型鑑定で6月下旬、甲板員曽山聖(あきら)さん(27)と道内の乗客女性(21)のDNA型と一致した。サハリン本島南部で6月に発見された遺体も道内の乗客男性(59)とDNA型が一致しており、国後島の2遺体と同時に引き渡される可能性がある。第1管区海上保安本部(小樽)は遺体を引き取った後、改めて身元を確認する。(文基祐、関口潤)