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根室「北方塾」今年も開講 四島への思い、ウクライナと重ね 中標津中の61人実感

 根室管内の小中学生が北方領土問題について学ぶ本年度の「北方少年少女塾」が10日、始まった。中標津中3年の生徒61人が根室市内の啓発施設を見学し、元島民の講話を聞いた。ロシアによるウクライナへの侵攻が続く中、若い世代に領土問題を伝える重要性が改めて高まっている。(北海道新聞根室版2022/6/11)

 北方少年少女塾は根室管内1市4町でつくる協議会が2001年度から行っている。昨年度は18校の558人が参加し、21年間の延べ人数は1万9047人になる。

 この日、中標津中の生徒は納沙布岬にある北方館を訪れた後、道立北方四島交流センターで色丹島出身の得能宏さん(88)から、島での思い出や、旧ソ連軍の北方領土への侵攻を受けて故郷を追われた様子を聞いた。参加した大畠礼旺さん(14)は現在の国際情勢と重ね合わせ、「ウクライナでの戦争でも、ふるさとに戻れない人たちがたくさんいる。自分たちの近くにも、ふるさとを思っているのに訪問できない元島民たちがいると改めて分かった」と話した。

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り日ロ関係は悪化。日本の対ロ制裁への対抗措置としてロシアは3月、平和条約交渉の拒否を表明した。得能さんは講話後、ウクライナ侵攻で返還運動へのむなしさを感じている元島民もいるといい「啓発や返還運動に空白期間ができ、島を諦める雰囲気ができるのが一番怖い。若い世代に島のことを伝えないといけない」と語った。

 同協議会事務局の担当者は「北方領土の知識を得て、領土問題を風化させないことが重要だ」と事業の意義を強調する。北隣協によると、本年度は11月下旬までに8校が参加を予定している。(武藤里美)