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四島の思い出を若者に語り10年 FMねむろ、元島民延べ85人出演 根室市内中高生が聞き

 北方領土の元島民が島での暮らしや思いを語るFMねむろのラジオ番組が、放送開始から10年目を迎える。元島民の体験を根室市民に伝えようと千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)根室支部が制作し、これまでに延べ85人の元島民が登場。聞き手は市内の中高生で、若い世代が北方領土問題に触れる入り口にもなっている。(北海道新聞根室版2022/6/7)

 ラジオ番組「高校生が聞く!知ってほしい四島(しま)の想い出」は2013年に始まった。市内には元島民のうち約2割が住むが、択捉島元島民2世で千島連盟の浜屋正一さん(59)=根室市=は「市民が元島民の話を聞く機会は、実は少ない。根室の人にこそ島のことを知ってほしいと考えた」と開始の経緯を話す。

 番組には元島民が毎回1人登場し、島での生活や旧ソ連の侵攻により故郷を追われた様子、引き揚げ後の暮らしを語ってもらう。聞き手は市内の中学生や全国各地で出前講座をする根室北方領土根室研究会の生徒が担当する。

 5月中旬に千島会館で行われた本年度初回の収録では、択捉島出身の上松健吾さん(86)が出演。島の生家ではクジラの内臓を加工して肥料を製造していたことや、冬は近くの山でスキーを楽しんだことなどを紹介した。聞き手の根室高3年の中山妃奈さん(17)と同久保歩夢さん(17)が現在の心境を尋ねると、上松さんは「ロシアに占領された今の状態に慣れてしまった。それでも、島には何回でも行きたいですね」と吐露した。

 中山さんは収録後、「根室市民でも領土問題への関心が低い人は多い。それでも伝える努力を続ければ、興味を持つ人が増えるかもしれない」と話した。

 今回収録分は11、25日午前10時から、FMねむろで放送する。番組は以降も、毎月第2、第4土曜日に放送される予定。(武藤里美