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貝殻島コンブ漁、日ロ交渉が妥結 出漁は大幅遅れか

 北海道水産会(札幌)は3日、北方領土貝殻島周辺でのコンブ漁の操業条件を決める日ロ民間交渉が妥結したと発表した。ロシアのウクライナ侵攻などを受け、例年4月に行う交渉は5月27日開始と大幅に遅れた。操業する日本漁船は例年、解禁日の6月1日か直後に出漁するが、今年は大幅に遅れそうだ。(北海道新聞2022/6/4)

 操業期間は例年と同じ6月1日~9月30日だが「指導会議など操業準備が整い次第出漁」とのただし書きが付いた。ロシア側の操業承認書発行にかかる日数により、出漁時期が左右される可能性がある。

 妥結したコンブ採取量は前年より89トン少ない3381トン。ロシア側に支払う採取料は233万円減の8851万円。操業隻数は11隻少ない220隻。日本側の代表は山崎峰男北海道水産会副会長が務め、ロシア漁業庁との間で東京でリモート方式で協議した。

 貝殻島周辺コンブ漁は、北方領土を実効支配するロシア主張海域に入るため、政府関係者にはロシア国境警備局に拿捕(だほ)されるなど不測の事態が起きるのでは―との慎重な見方が根強かった。そのため漁業者の安全を担保できるかが協議の焦点になったとみられる。

 コンブ漁を含め四つある日ロ間の漁業協定のうち、ロシアの川で生まれたサケ・マスの漁業については、水産庁が4月23日、日本200カイリ水域内流し網漁の操業条件の妥結を発表。だがロシア200カイリ水域で行う引き網漁の試験操業は正式交渉に入っておらず、金子原二郎農水相は今月3日の会見で「(交渉は)日程調整中で、これ以上の答えは差し控えたい」と述べた。

 根室市の歯舞漁協昆布漁業部会の柿本康弘部会長は「中身もほぼ前年並みで心底ほっとした。多少出漁が遅れても漁を継続することが何よりも大事だ。交渉に当たってくれた人たちに感謝し、安全操業に徹したい」と喜んだ。

 鈴木直道知事は「平和な海の象徴と位置づけられる歴史的に重要な漁業。安全な操業が確保されるよう関係団体と連携して取り組む」との談話を発表した。(森川純、佐々木馨斗、川口大地)