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北方領土墓参を支えた北海道の漁業取締船「北王丸」民間に売却され海外で第二の人生

 1999年(平成11)から2013年(平成24)まで、主に北方領土墓参に使用された北海道の漁業取締船「北王丸」(499トン)が取締船としての役割を終え、今年3月、約2,500万円で民間企業に売却された。海外で第二の人生を送るという。

 私が初めて北方領土墓参に参加したのは2010年(平成22)だった。墓地は国後島の古丹消とオタトミの2カ所で元島民、遺族・同行者43人だった。その時に乗った船が北海道の漁業取締船「北王丸」だった。

 狭いながらもアットホームな雰囲気で、団員が一堂に会する食堂はなかったが、互いに肩を寄せ合い食事をし、夜遅くまでお酒を飲んで島の思い出を語る、うれしそうな元島民の表情が今も目に浮かぶ。

 船長以下乗組員は北海道の職員だったが、皆さん墓参の意味を理解し、親身になって元島民のお世話をしてくれた。木村勇二船長の時には、墓参に参加した記念にと、訪れた島を背景に「北王丸」の写真を撮り、下船時に、船長自ら団員一人一人にプレゼントしていた。

 「北王丸」は1999年3月に竣工。当時の北海道の堀達也知事の指示で、北方四島への渡航にも使用できるように、元島民など乗客が寝泊まりできる居室スペースが設けられた。竣工間もない8月25日から28日に行われた北方墓参(国後島・乳呑路、色丹島・キリトウシ)に初めて登場し、元島民の遺族と同行者49人を運んだ。以来28回のベ1,139人の元島民・遺族・同行者を乗せて根室北方四島を往来した。

 2011年のビザなし交流では、それまで使用していた民間チャーター船「ロサルゴサ」が所有企業の税金滞納で差し押さえられたことから使用できなくなり、急遽ピンチヒッターとして駆け付け、日本側訪問団を乗せて国後島へ向かったこともあった。

 翌年2012年7月の北方墓参の時、堀前知事と一緒に根室花咲港に係留中の北王丸を訪問した。感謝の気持ちを込めて「北の勝」の一斗樽を持参した。この年、定年を迎えることになっていた木村船長以下、全乗組員が岸壁に整列し、出迎えてくれたことに堀前知事は感激した様子だった。自分の時代に建造した船だったが、乗る機会に恵まれず、この時初めて船内を案内してもらった。

「北王丸」の諸元は全長59.52m、全幅9.2m、速力16ノット、航続距離は4,000海里。