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善隣関係「日本が壊した」北方領土ロシア人、悲観も

 ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、北方領土問題を含む日ロ間の平和条約締結交渉が中断になったことを受け、4島に住むロシア人は30日までに、対ロ制裁に加わった日本がこれまで築いてきた善隣関係を「自分たちの手で壊した」と主張した。一方で、日ロの交流が途絶えることを悲観する声もあった。(北海道新聞2022/3/30)

 「日本が取った前例のない圧力への対応だ」。択捉島を事実上管轄する極東サハリン州クリール地区のワディム・ロコトフ地区長は通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画で、ロシア政府の対応を支持した。

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 侵攻を受け、日本政府はロシアに対し、国際決済網からの銀行排除やプーチン大統領の資産凍結などの制裁を発動。反発するロシアは交渉中断に加え、4島でのビザなし交流停止や共同経済活動実現に向けた協議からの撤退などを表明した。

 色丹島で長年暮らし、ビザなし交流に何度も参加したロシア人男性はオンラインでの取材に「交流は善隣関係に基づくものだった。日本の政治家は自分たちの手で信頼を壊した」と非難。互いの立場を主張するだけの日本との交渉は近年「儀式的な性格を帯びていた」と指摘した。一方で「医薬品の輸出停止など生活に直接影響する制裁は避けてほしい」と訴えた。

 ビザなし交流に参加した経験のある国後島在住の60代男性は「日本に多くの友人がいるが、会えなくなってしまう」と悔やむ。ロシアが「軍事作戦」と称する侵攻に否定的で、ウクライナにいる親族を思い「今すぐやめるべきだ」と訴えた。

 自身は動画投稿サイト「ユーチューブ」でウクライナ側からの情報にも触れており、ロシア側のニュースを批判的に見ているが、島民の間で侵攻に反対する人は少数といい「多くが政府のプロパガンダに洗脳されている」とため息をついた。