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元島民、怒りと落胆「生きている間に島に行くことはできるのか」ロシア平和条約交渉拒否

 ロシア外務省が21日、北方領土問題を含む日ロ平和条約締結交渉を拒否する方針を一方的に表明したことを受け、道内の元島民らには怒りと落胆が広がった。ロシア側は、元島民らが故郷を訪れるための北方四島ビザなし交流や自由訪問事業の停止も表明。元島民の平均年齢は86歳を超えており、「生きている間にもう一度、島に行くことはできるのか」との不安の声も漏れた。(北海道新聞夕刊2022/3/22)

 元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)の脇紀美夫理事長(81)=根室管内羅臼町=は22日、「残念な状況だとしか言えない。私たちは何年かかっても、後継者の世代になっても『四島返還』を訴え続けるしかすべがない」と言葉少なに語った。

 ロシアは、ウクライナ侵攻を巡る日本の対応が「非友好的」だとし、交渉を拒否する全ての責任は日本側にあると主張。千島連盟根室支部の角鹿泰司支部長代行(84)=根室市=は「日本が対ロ制裁を科した時点で、ロシアの報復は予想していた。自分の意に沿わないと交渉を打ち切るやり方は、冷戦期から何も変わらない」と憤った。

 択捉島出身の松本侑三さん(80)=札幌市=は「こんなむちゃくちゃなことは許されない。日本が長年積み上げてきた交渉の成果が水泡に帰してしまう」と懸念。コロナ禍で2年連続で中断されたビザなし交流の早期再開も絶望的な状況で「元島民は高齢で島に行く機会は限られている。少なくとも墓参だけは絶対に続けてほしい」と訴えた。

 根室市の石垣雅敏市長は22日午前、ロシアの交渉拒否方針は「遺憾」であり、ウクライナ情勢を注視しつつ、一日も早い状況の改善を願うとのコメントを発表した。(武藤里美、村上辰徳)

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