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ビザなし交流の窓口企業で「友好の家」も運営「南クリル・ドーケル」が創立30周年

 北方四島交流事業の四島側窓口企業にもなっている国後島ユジノクリリスク(古釜布)にある「南クリル・ドーケル」が創立30周年を迎えた。1992年2月28日に、当時のニコライ・ポキージン地区長の命令で市営企業「ドーケル」が設立された。創設者は南クリル地区行政府だった。主な企業活動は、国後島色丹島間の海上貨物輸送と旅客輸送、荷積みと荷下ろし、外国船の事務手続き代行などの港湾管理のほか、ホテルなど宿泊施設の運営、小売業、ケータリング、観光事業など。同社は南クリル地区にある主要な都市型企業の1つで、地域の社会経済、文化的発展に大きな影響力を持つ。

 1992年2月、南クリル地区行政府の市有財産管理委員会は自走式はしけ「希望丸」を同社に移管した。この船は人道支援として日本が建造し、南クリル地区に贈ったものだ。1998年秋には、人道支援の枠組みで日本側は第5埠頭を建設している。1993年、自走式はしけSPP-028を購入、1994年夏には平屋建ての社屋を建設した。初代の社長はレオニード・アレクセイヴィッチ・グラジィリンで、主任会計士にはリュドゥミラ・ドブルシナが任命された。

 しかし、1994年10月の大地震は企業に取り返しのつかない損害をもたらした。すべての船舶が水に浸かり、桟橋が損壊、津波が社屋を流した。この大地震は南クリル地区に数十億ルーブルの被害をもたらした。経済活動を継続させるためにコルサコフとウグレゴルスクの海運会社から船を借りることが決まった。1998年には、企業が再編成され、それまでの「ドーケル」を新会社である公営企業「南クリル・ドーケル」が譲り受ける形で発足した。新社長にはセルゲイ・アナトリエビッチ・チェルノフが任命され、ガリーナ・ウラジミロフナ・ヴィシュロワが主任会計士に就いた。

 2000年には社屋と機器を保管する倉庫などを整備、2005年から食料品店を営業している。店は15人の従業員を雇用し、2018年にソーシャルストアに認定され、「手ごろな価格の魚」「地域の製品」プログラムに参加している。また、サハリンのメーカーから食料品や肉製品、乳製品を輸入している。

 また、2015年からは、南クリル・ドーケルとサハリン州政府、ロシア外務省の合意に基づいて、クリル諸島の3つの島(国後島色丹島択捉島)に住むロシア国民と日本国民によるビザなし交流事業を運営している。2015年、日本が建てた「友好の家」と「レプレゼンタティブ・センター」の2つのホテルが同社に移管された。さらに2018年には自社のホテル「ブリーズ」をオーブンさせた。国後島を訪れる観光客やゲストに人気がある。2019年には、Covid-19コロナウイルス感染対策として、所有するホテルを隔離施設として開放し、医師と一緒に企業の従業員が協力して対応した。これにより、地域での感染拡大を最小限に抑えることができた。

 2020年には、新規事業として地方の集落を結ぶ定期バスの運行を開始した。現在の社長はロマン・シリエンコフである。(kuril.news.ru 2022/2/21)

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国後島・古釜布の埠頭に係留された「希望丸」(手前)と「友好丸」=日本が人道支援で贈った自走式はしけ

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古釜布港に面して建つ南クリル・ドーケルの社屋(スーパーとホテルが入っている)