終戦直後まで根室市と国後島をつないだ通信用海底ケーブルの故障や修理など、1899(明治32)年以降の保守記録を記した文書が、長崎市の「海底線史料館」で現存していたことが25日までに判明した。「ケーブルが流氷でたびたび断線した」との元島民の証言を裏付ける貴重な資料だ。(毎日新聞北海道版2021/11/26)
表題に「根室海峡以北」と記された幅約1㌢のつづり。根室市に建つ「根室国後間海底電信線陸揚施設」(通称・陸揚庫)から国後島に延びていた海底ケーブルなどの保守記録で、工事の日付や区間、担当者名などが書かれている。
今年10月、陸揚庫が国の登録有形文化財となったことを受け、国内外の海底ケーブル事業を展開する「NTTワールドエンジニアリングマリン」(横浜市)の平林実取締役(56)が「関連する資料があるかもしれない」と同社が運営する「海底線史料館」を訪れ、文書を発見。流氷に耐えられるよう、ケーブルに強度をもたせていたことも確認されたという。
同史料館は、コイルが二重に巻かれ、太さが一般的なケーブル線の倍ほどある「アイリッシュ型特殊浅海線」(直径8㌢)の実物を展示しており、平林さんは今月25日、根室で同じものが使われていたかなどを確かめるため陸揚庫を訪問。ケーブルを目の当たりにして「やっぱりアイリッシュ型だ」と叫んだ。
平林さんは「先達が築き上げてきた貴重な資料。残しておかなければならない財産」と話した。(本間浩昭)
