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「元島民の気持ちに応えたい」千島連盟羅臼支部が独自の洋上慰霊へ

 「2年も古里に帰れず、じくじたる思いだった。全国にいる北方領土の元島民や親族の気持ちにも応えたい」―。千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)羅臼支部の鈴木日出男支部長(69)は27日、先祖の洋上慰霊を10月6日に独自で行うと発表し、新型コロナウイルス感染拡大による墓参の中断で募っていた思いを、こう語った。(北海道新聞釧路根室版2021/9/28)

■中止の2年「つらかった」

 2020年からの新型コロナ禍で、ビザなし渡航は2年連続で中止。道と千島連盟(札幌)は四島を望む船上での慰霊祭開催を計画したが、これも見送りとなり、北方領土墓参ができない状態が続いている。今年は千島連盟根室支部が10月中旬、渡航による墓参に代え、根室市納沙布岬で慰霊祭を開くことを決めている。

 こうした中、独自での初実施に踏み切った洋上慰霊について、羅臼町の湊屋稔町長は27日、町役場で行った記者会見で「先祖を弔いたいという元島民の思いを表現できる場として考えた」と強調した。

 両親が国後島出身で元島民2世の鈴木支部長は会見後、「元島民の年齢は平均86歳を超え、高齢化している。上陸して手を合わせられず、この2年間は非常に長く、つらいものだった」と吐露。歯舞群島多楽島出身で、千島連盟標津支部の福沢英雄支部長(81)は「長く島に行けず、先祖に申し訳ない気持ちだった。勇んで参加したい」と、洋上開催ながら慰霊ができることを、前向きに受け止めた。

 洋上慰霊には羅臼の観光船「エバーグリーン38」で向かう予定。定員80人だが、感染対策として半数に制限する。当日は僧侶も乗船し、船上には祭壇を設ける。参加は根室管内の千島連盟各支部の代表者とし、羅臼は9人、標津、中標津、別海各3人、札幌1人が参加。このほか各町の職員や報道機関を加え、計40人が乗り込む予定。(田中華蓮)

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     洋上慰霊について説明する鈴木日出男支部長(左)と湊屋稔町長

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