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北方四島免税に日本抗議 実効支配追認を危惧 ロシア、来年までに導入方針

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 ロシアのプーチン大統領が、北方領土などに新たに導入する免税制度を日本との共同経済活動にも適用する考えを表明したことについて、日本政府はロシア法に基づいた制度は受け入れられないとして抗議した。ただ、プーチン氏の発言を受け、ロシア政府は来年までに制度を導入する構えで、日本に受け入れを求める声が強まる。日ロ共同経済活動の実現は困難になったとの観測も出ている。(北海道新聞2021/9/7)

 「ロシア法を前提に北方四島の開発に関する制度を導入することはわが国の立場、日ロ間で協議してきた趣旨と相いれず、遺憾だ」。加藤勝信官房長官は6日の記者会見でロシア側を批判。3日に外務省が在日ロシア大使館などに抗議したことを明らかにした。

 免税制度は、経済活動に関する多くの税を10年間免除するもので、海外企業も対象とする方針。ただ、日本企業がロシア法に基づいて四島で活動すれば、実効支配を追認することになりかねない。加藤氏は日ロ共同経済活動は「双方の法的立場を害することなく実施することで一致している」と強調し、ロシア側に再考を求める考えを示した。

 四島のうち色丹島には既に税の減免が受けられる経済特区「先行発展区」が設置されている。日本外務省幹部は「今まで全くなかったものが導入されるわけではなく、修復不可能な措置とは考えていない」と述べた。

 しかし、プーチン氏が共同経済活動への適用を明言したことで、導入の動きは加速している。ロシアメディアによると、チェクンコフ極東・北極圏発展相は免税制度について「年末までに作業を終え、導入したい」と説明。択捉島を事実上管轄するサハリン州クリール地区のロコトフ地区長は、プーチン氏が「日本に注目してもらい(ビジネスに)来てくれるように直接訴えた」として、日本側が受け入れることを期待した。

 一方、プーチン政権に近いロシア外交問題評議会アンドレイ・コルトノフ会長はロシアメディアに、第三国も対象にした免税制度を「日本が気に入るはずがない」と指摘。プーチン氏の発言は「ロシアと日本が、島々を共同開発する試みをやめることを意味する」と論評した。(ユジノサハリンスク 仁科裕章、東京報道 古田夏也)

 

旧日本軍の戦争責任追及 ハバロフスク軍事裁判、プーチン氏「極めて重要」

(北海道新聞2021/9/7)

 ロシアのプーチン大統領は6日、旧ソ連が日本軍の戦争責任を追及した1949年のハバロフスク軍事裁判について「歴史的な記憶を保存し、第2次世界大戦の出来事をゆがめる試みに効果的に対抗するために極めて重要だ」と述べた。ロシア側は同裁判の記録などを根拠にソ連の対日参戦を正当化する主張を強めている。プーチン氏の発言はソ連北方四島占領を非難する日本を強くけん制した形だ。

 プーチン氏は6日、ハバロフスクで開かれた同裁判に関する政府系の学術フォーラムにメッセージを寄せた。フォーラムでは、ロシア連邦保安局(FSB)の中央古文書館が機密解除した、関東軍幹部の証言記録などの文書を初めて一般に公開。日本が日ソ中立条約に反してソ連との戦争を準備し、生物兵器の使用を計画していたなどと、一方的に主張する内容だ。

 プーチン氏は、第2次大戦の出来事は「真実と古文書館の資料に立脚する」と強調。こうした文書を根拠に、ソ連の対日参戦を正当化する考えを示した。

 ソ連は45年(昭和20年)8月9日、当時まだ有効だった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、日本がポツダム宣言を受諾後に北方四島に侵攻。日本政府は、ソ連の四島占領は「法的根拠がない」として領土返還を求めてきた。

 一方、プーチン政権は、ロシアによる四島領有を「大戦の結果」と主張。フォーラムにオンライン参加したナルイシキン対外情報局長官は、日本が大戦の結果を認めることが「最も敏感な問題を含め、全ての問題の解決策を探ることを可能にする強固な基盤になる」と述べ、ロシア側の主張を受け入れるよう求めた。(モスクワ則定隆史)

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