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北方領土の語り部活動、コロナ禍で6割減 「なるべく機会持ってほしい」

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 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、元島民らが北方領土の記憶を伝え広める「語り部」の活動が制限を受けている。2020年度の語り部による講演の回数は、前年度比61%減の82回。語り部たちは「領土返還要求運動を続けていくためには、島の記憶を伝えていく必要がある」と危機感を募らせる。コロナ禍を受け、オンライン会議システムを使った試みも始まっている。(北海道新聞根室版2021/7/2)

 管内の小中学生が北方領土について学ぶ「北方少年少女塾」。本年度の初回は6月23日に道立北方四島交流センターで開き、柏陵中1年の生徒たちが参加した。語り部として登壇した歯舞群島多楽島出身の河田隆志さん(84)は、終戦後に旧ソ連軍が上陸した際の様子や一時的にソ連兵と一緒に生活したことなどを語った。生徒たちはうなずいたり、メモを取ったりしながら真剣に話に聞き入った。

 河田さんは「話したいことはたくさんある。元島民は一人一人異なった経験を持っているので、なるべく話を聞く機会を持ってほしい」と願う。

 語り部事業は千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)が実施し、教育機関などから要請を受け、根室管内を含む全国各地に語り部を派遣している。現在の語り部の登録者数は元島民42人を含む118人。講演の回数は毎年200回前後で推移してきたが、昨年度は新型コロナの影響で要請が激減した。

 新型コロナの流行を受け、オンライン会議システムを使った語り部活動も広がる。千島連盟によると、19年度以前はほぼなかったオンラインでの語り部活動が、昨年度は10回あった。

 1993年からこれまでに208回の語り部活動を行った色丹島出身の得能宏さん(87)は「島の話に触れる機会は減らしてほしくない」と訴える。「かつて住んでいた人たちの記憶が伝えられてこそ、将来島が返還されたときに『よかったな』と喜び合える。記憶が途絶えたところに返還されてもむなしいだけだ」と話した。(武藤里美)

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