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小さな本の壮大な旅の物語 国後島から根室まで1万4,000km

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 国後島の知人から書籍を郵便で送ってもらった。国際郵便である。北方四島から国際郵便物を受け取ったのは初めての体験だ。これまでは、ビザなし渡航の北方墓参や自由訪問、北方四島交流(ビザなし交流)で年に2~3回、島に渡っていたので、向こうの人に直接手渡しでお土産を届けたり、いただいたりしていた。そのビザなし渡航も、昨年から、新型コロナウイルスの影響で止まったままになっている。

 それは「国際書留」で送られてきた。「100」と印字された切手が18枚、べたべたと貼られている。それが100ルーブルの意味であれば、全部で1,800ルーブル。日本円にして2,700円ほどになる。消印に「05 04 21」とあるので、2021年5月4日なのだろう。引き受けた郵便局の所在地は「ユジノクリリスク(国後島・古釜布)」と読める。根室市に到着したのは5月27日だから、23日かかって届いたことになる。

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 包みの表側に、「国際郵便物(追跡バーコード)」のシールが貼ってあり、海外番号と国内番号の記号と数字が2列に並んでいる。試しに日本郵便株式会社のウエブサイトで検索してみた。履歴情報がずらりと出て来た。

 

 5月 5 日 引受 ロシア

 5月14日 国際交換局に到着(モスクワ)

 5月14日 税関検査のため税関へ提示 

 5月14日 税関から受領 

 5月17日 国際交換局から発送(モスクワ)

 5月24日 国際交換局に到着(日本・川崎東郵便局)

 5月25日 通関手続き(川崎東郵便局)

 5月25日 国際交換局から発送(川崎東郵便局)

 5月27日 到着(根室郵便局)

 5月27日 配達済み

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 ビザなし渡航に使用される船「えとびりか」は、根室港から国後島・古釜布まで3時間ほどで行く。距離にして80kmほどだが、そこにはカッコつきの「国境」があって、国後島で投函した郵便物は、はるか7,000kmも離れたモスクワの国際交換局まで9日かけて運ばれ、税関検査を受けるのである。

 日本郵便株式会社の「国際郵便約款」の第4条には、「この約款において、北方諸島(歯舞群島色丹島国後島及び択捉島をいいます。)は、当分の間、外国とみなします。」と記載されている。いまさらながらだが、日本のいくつかの法律では、北方四島を「外国」として扱ったり、法律の適用を除外する地域に指定しているのである。

 それにしても「北方諸島」という表現はほとんど聞いたことがない。「北方地域」なら分かるが「北方諸島」はピンとこない。日本郵便株式会社の国際郵便(通常郵便や小包)の取り扱いをみると、「北方諸島」は「欧州」の中の一地域とされている。地理的に言って、「欧州」じゃないだろうと思うが、ロシアが属する「欧州」ということなのだろう。

 その後、わが書籍はモスクワから7日かかって日本の国際交換局である神奈川県の川崎東郵便局に到着し、通関手続きを経て、3日後に根室市にたどり着いた。

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 投函された場所(国後島)と届けられた場所(根室市)は、地球サイズで見るとほとんど同じ地域であるから、小さな本はモスクワ往復14,000kmの長旅を乗り越えて、はるばるやって来たことになる。壮大な無駄な気もするし、よくもまあ迷子にならずにたどり着いたものだと愛おしくもなってくる。