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ロシア極東の漁業苦境に 中国の新型コロナ水際対策で輸出先失う

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 ロシア極東の主要産業の一つ、漁業が苦境に陥っている。輸出の6割を占める中国が新型コロナウイルスの水際対策を理由に昨年から水産物の輸入規制を厳格化し、輸出先を失った。中国側の規制緩和は見通せず、業界は対応に頭を悩ませる。オホーツク海日本海スケトウダラなどが多く取れる極東は、ロシア全体の水揚げ量の約7割を占める。極東連邦管区の税関当局によると、昨年は水産物160万トン、34億7000万ドル(約3665億3600万円)相当を輸出。中国向けは大半が未加工の冷凍魚のまま主に大連港へ出荷され、現地で加工される。(SankeiBiz 2021/2/23)

 管区政府などによると昨年9月以降、中国側がロシアの水産品の梱包材からウイルスが検出されたとして輸入を制限。その後、大連港でロシアの船からウイルスが次々と確認された。港湾労働者の集団感染などもあり、中国は水産物の輸入規制を厳格化。ロシア極東の漁業に大打撃となった。

 極東では冷凍倉庫や加工施設の不足が長年続いており、港は輸出できない水産品であふれた。大連沖に長期間足止めされる船や、倉庫に余裕がある韓国の釜山(プサン)に向かう船も出ている。東南アジアやアフリカの販路を模索する動きもある。

 極東開発を統括するトルトネフ副首相はこのほど、ウラジオストクでの漁業関係者との会合で「1国への輸出に過度に依存できない」と強調。冷凍魚のままでの輸出を減らしロシア国内での加工能力を拡大、輸出先の多角化も急ぐ考えを示した。(ウラジオストク 共同)

 

ロシア動植物衛生監督局長 中国の水産物輸入制限は長期的戦略

(ロシア漁業ニュース2021/3/9 )

 ロシア動植物衛生監督局長ダンクベルトは、ロシア漁業が中国に対して大幅に譲歩し、水産物の供給回復を期待するべきではないと提言した。ロシアの水産物輸出の70%が中国に向けられていたが、新型コロナウイルス(以下CV19)拡散防止対策により昨年2020年末から、ほぼ停止状態となった。

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 CV19は、ロシア人漁船員と水産物製品から繰り返し検出された。ロシスカヤ・ガゼータ紙のインタァヴューでダンクベルトは、ロシア漁船・運搬船の乗組員にCV19感染者がいるのは事実で、水産物製品供給が制限されたのは、中国人の健康への懸念だと語り、自身(ダンクベルト)もそれについて疑いの余地はないと加えた。

 しかし、一方でダンクベルトは、ロシアの水産物の輸入を制限する理由はそれだけではないとしている。ダンクベルトは、中国との交信書類を分析していくと、もはやCV19に特化した規制だけでなく、あらゆる製品の輸入を制限することを可能にする長期的戦略プログラムの一部と捉えるべきものだと語り、多くの点で、輸出者側に一方的に問題があるようにオブリゲーションを負わせる形をとっていると加えた。

 これまで、中国市場はロシア漁業の水産加工場だった。中国は原材料を輸入し、そこで加工、製品を第3国ばかりでなく、ロシアへも輸出してきた。ロシアでは何年もの間、独自の水産加工処理システムが乏しいままで、市場は多様化しておらず、寡占化が発生している。

 ダンクベルトは、いくつかの流通チャネルがあるはずで、それを開拓しなければ、寡占化が生産価格を下げ、さらには産業からの撤退を招くことになると警告した。