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樺太連盟3月末解散 引き揚げ者援護、戦禍伝え70年超 会員高齢化「使命果たした」

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 樺太(現ロシア・サハリン)からの戦後引き揚げ者らでつくる全国樺太連盟(東京、西本美嗣会長)が、3月末で解散することが分かった。1948年の結成以来、引き揚げ者の援護や親睦のほか、樺太の暮らしや戦禍の伝承に力を入れてきたが、会員の高齢化で継続が困難になった。樺太ゆかりの資料約8200点は北海道博物館などに委譲し、日本が40年間統治した「樺太の記憶」を後世につなぐ考えだ。(北海道新聞2021/1/18)

 同連盟は2010年の総会で21年までの解散方針を示し、所有地の売却などを進めてきた。今年3月末とする解散日程は昨年10月の理事会で決定し、今月1日付の会報で会員に通知した。ただ「新型コロナウイルスの影響で会合が開けず、解散日程が遅れる可能性もある」という。解散に伴い、東京の本部事務所と札幌市中央区の北海道事務所は閉鎖する。

 太平洋戦争が終結した45年(昭和20年)8月、南樺太旧ソ連軍が侵攻し、住民約40万人が引き揚げを余儀なくされた。樺太連盟は援護を目的に48年に結成され、49年に社団法人となった。引き揚げ者の子弟向けの学生寮を運営するなどの生活支援や、樺太史の記録に取り組み、近年は移動展を全国各地で開くなど樺太について語り継ぐ活動に軸足を置いてきた。

 会員数は現在968人(道内は都道府県別で最多の387人)。ピークだった94年の6300人から激減した。2、3世の加入は限られ、平均年齢は84歳を超えた。

 会員らから収集した資料のうち約5700点は道博物館に、残る約2500点は3年前に開館した稚内市樺太記念館へ委譲。引き揚げ者が記憶を元に作製した街路図や人名録も含まれている。

 北海道事務所長の森川利一(としいち)さん(91)は「やり残したこともあるが、歴史的使命を果たした。林業、炭鉱、水産がそろい『宝の島』と呼ばれた日本領樺太の記憶が後世に語り継がれることを願う」と語る。

 同連盟は最後の移動展を2月18~21日、札幌市中央区サッポロファクトリーで開く予定。入場無料。