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ごみ施設、ロシア単独始動 日本との共同活動進展なく 国後の焼却場既に入札

 北方領土を事実上管轄するロシア・サハリン州政府は、国後島の古釜布(ユジノクリーリスク)郊外にごみ焼却施設を建設する方針を決め、設計業者の入札を開始した。日本政府は、北方四島での日ロ共同経済活動で優先事業に位置付けた「ごみの減容対策」の具体化に向け、焼却施設建設を含む事業案を提示していたが、実現していない。新型コロナウイルスの影響で日ロ間の協議が停滞する中、建設を急ぎたいロシア側が単独で動きだした格好だ。(北海道新聞2020/12/27)

 地元通信社サハリン・インフォによると、施設の建設予定地は約3万5千平方メートルで、受け入れ能力は年間1万3800トンを想定。管理棟や給油設備、下水処理施設、変電所なども備える。29日まで入札を受け付け、落札者を決めるという。

 「ごみ減容」は、日ロ両政府が共同経済活動で検討していた5項目の一つで、昨年6月の首脳会談で「観光ツアー」とともに優先的に事業化を目指すことで合意していた。

 同年8月にロシア側が根室市、翌月に日本側が国後島をそれぞれ訪問し、ごみ処理の現状を視察。日本側は当初、ごみを分別や圧縮で減らす設備や技術の提供を想定していたが、ロシア側が強く求める焼却施設建設も含めた事業案を示していた。

 ロシアが実効支配する四島での共同経済活動には日ロ双方の立場を害さず、事業の実施や経済関係者の往来を可能にする特別な法的枠組みが必要となる。だが、自国法に基づいた実施を求めるロシア側との交渉は難航が続き、さらに今年に入って新型コロナの影響で直接の対話や現地視察も難しい状況となった。

 ネットを使った外務省局長級のテレビ会議などが数回行われたが、日本側関係者は「協議継続を確認する程度で前進はなく、焼却施設の入札も知らされなかった」という。

 プーチン政権は近年、ごみによる環境汚染などの対策に力を入れている。四島は観光客の受け入れも進めており、ごみ処理は喫緊の課題。州政府は北海道新聞の取材に「焼却施設の建設は連邦政府の国家プロジェクトで進んでいる。同様の計画が択捉島と千島列島北部パラムシル(幌筵)島でもある」と強調する。

 日本外務省幹部は「ロシア側のやっていることだから分からない」と静観。実際に入札に参加企業があるかは不透明だが、コロナ禍で協議が滞ったまま、日本側が関われなくなる可能性もある。(ユジノサハリンスク 仁科裕章、根室支局 村上辰徳、東京報道 広田孝明)

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