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北方四島生まれは「日本出身」米の永住権申請、数十年前から規定 明文化でロシア人島民反発

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 ロシアが実効支配する北方領土で生まれた人が、米国永住権(グリーンカード)を申請する際、米政府が数十年前から出身国を日本として扱っていたことが、米国務省などへの取材で分かった。2018年からはグリーンカードを抽選で与える制度の応募規定に、出身国を日本と記すように明文化。最近になって、ロシア人島民らがこの記述に気づき、不満の声を上げている。(北海道新聞2020/12/4)

 グリーンカードは米国永住を認める査証(ビザ)で、米国人と結婚した人や特別な才能を持った学者などが取得条件。さらに1991年から、条件を緩和した年間5万人の抽選枠も設けられた。抽選制度には、2018年に日本から約2万2千人、ロシアから約29万人が応募。日本は263人が認められたが、北方領土出身のロシア人を含んでいるかは不明だ。

 米国務省はこの応募規定に18年から、出身国について「歯舞群島色丹島国後島択捉島で生まれた人は日本と示す」と注意書きを明記。太平洋戦争終結時まで日本が統治したロシア・サハリン南部(南樺太)で生まれた人は、ロシアとするように書き加えた。国務省北海道新聞の取材に「誤って申請して無効になったケースがあり、ミスを防ぐための措置」と説明した。

 北方四島で生まれた人の出身国に関して、国務省は「米国として日本の主権を認めており、抽選制度が始まる前から日本と記すよう求めている」と回答。同省が、1956年に北方四島は日本の固有の領土で、日本の主権下にあると認めた覚書が根拠とみられ、数十年前から適用しているという。日本外務省関係者は、国務省の規定について「知らなかった」と話す。

 今年10~11月の申請時に、ロシア人島民らがこの規定を見つけ、クリール諸島(千島列島と北方領土)を事実上管轄するサハリン州のサハリン・クリール通信が「米国はクリールからの移民に居住国を日本と示すよう強制」と報道。北方四島が「米国を含む他国では日本に属していると言われている」とし、「ロシア人はそのような言及に満足していない」と批判した。(ユジノサハリンスク 仁科裕章、東京報道 広田孝明)