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択捉島の地下1.5mから神秘的な物語が発掘された

北方四島の話題

 サハリン・クリル通信2019/12/18

●…今年夏、択捉島で行われた史上最大規模の遺跡発掘調査で指揮を執った国立サハリン大学考古学博物館のヴィチェスラフ・グリシュチェンコ氏が興味深い発見について語った。

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中世からこんにちは

●…何層にも重なる地層はパフパイみたいものだ。各層に当時の習慣や経済、人々の暮らしの変化など刻み込まれている。択捉島の発掘現場からは5つの層が現れ、層の1つが火山灰によって分離されていた。最も興味深いのは中世のものだ。その層から古代の鍛冶屋の遺跡を見つけることが出来た。数滴の金属が保存されていた。「これは本当に発見だった」とクリシュチェンコ氏は語る。「当時のクリルの住民が金属を使用していただけでなく、それを処理する方法を知っていたことが確認された」--。

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神秘的な石のパーテーション

●…1.5m下の地層に保たれてきた神秘的な石の壁が1万年たってから、研究者によって掘り出された。石壁は等間隔に平行に配置され、古代の住居とは全く違った。「これらは埋葬した跡だと推測している」と、グリシュチェンコ氏は言った。「間隔は約3mで、1つの区画には頭を並べるように2人を埋葬できる。こうした埋葬の例は本土では知られているが、択捉島では初めての発見だった」と語る。また、考古学者たちは、矢じりをはじめ新石器時代の道具を発見したが、北海道からもたらされた黒曜石から出来たものだった。赤みを帯びた玉のペンダントは取付穴があけられ、慎重に研磨された三角形の石のように見えた。これらは、隣人たちとの密接な交易があったを示している。

火の土器

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●…クリシュチェンコ氏は新石器時代の土器を興味深い発見と呼んだ。それ以前の人々は、砂と貝殻の小さな粒子が混じった粘土で土器を作ったが、ここから出土した土器は火で焼いてあった。技術的なブレークスルーが起こった。択捉島の土器は、サハリン地域のパターンと類似しているが、制作者の芸術的センスだけでなく、異星人のある種の目印でもあった。大学の博物館には、択捉島で発掘した5,000点の出土品が持ち込まれ、それらの分析、年代測定には数カ月かかるだろう。

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3カ月に及んだ調査

択捉島のクリリスク(紗那)とキトヴイ(内岡)間のプロムナード建設現場で行われた発掘は3カ月続き、約2,500㎡をカバーした。クリル地区行政府は今年初め、1億9,400万ルーブルでギドロストロイ社に発注した。現在の法律では、建設現場において考古学上の救助活動が求められており、択捉島では過去100年で最大規模の発掘調査を行うことが決定された。限られた時間で対応するため、サハリンだけでなく、モスクワやサンクトペテルブルクなど各都市から専門家40人以上が集められた。地元住民は最初、なぜ海岸沿いを掘るのか理解できなかった。しかし、古代の住居跡が地下から現れ始めたとき、人々は発掘現場を訪れるようになった。人々は「ここで、物語のすべてを掘り起こさけた」と喝采した。

ギドロストロイが多大な貢献

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●…「択捉島の開発に多大な貢献をしている水産・建設大手ギドロストロイ社は称賛にあたいする」とクリシュチェンコ氏は言う。択捉島は常に変化し、最近ではオリジナルの野外アートも登場した。今回、発掘したオブジェは島の歴史と文化を反映して、遊歩道に展示するというアイディアも生まれている。島の発掘に携わった考古学者は最早、よそ者ではない。住んでいる土地をもっと美しく魅力的にしようとする人は、すでに島民である。

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