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勇留、志発島自由訪問団 “引き継ぎの旅”から戻る

根室新聞2019/9/3

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元島民がふるさとを訪れる第6回自由訪問団(角鹿泰司団長)は2日、歯舞群島勇留島志発島での全日程を終え、四島交流専用船「えとぴりか」(1124トン)で根室港へ戻った。好天に恵まれ、上陸と視察を計画していた2島計10カ所を訪問できたが、一部でロシア側から立ち入りが許されない地区もあった。

 一行は元島民等50人、同行者11人の計61人で、うち2世、3世が31人と後継者中心の団員構成となった。千島歯舞諸島居住者連盟が実施主体となり、8月31日は勇留島の税庫前やウタノボリなど7カ所、9月1日は志発島の西浦泊や相泊など3カ所を訪れた。

 帰港後に訪問団が千島会館で開いた記者会見で、勇留島モトトロモイ生まれの角鹿団長(82)は、「後継者に全てを託す思いで参加した」とした上で、今回副団長を務めた3人の2世について「元島民と後継者をつなぐ素晴らしい役目を果たした。今後はこの3人が後継者リーダーになるだろう」と、引き継ぎの旅が大成功だったことを報告した。

 角鹿団長は今回、勇留小学校で3年生まで共に過ごした同級生の濱守清勝さん(82)=富山県=と参加。低血圧の影響で車いすを利用している濱守さんは、日ごろから電話などで「家では10歩も歩けない」と角鹿団長に伝えるほど体調が思わしくなかったが、島に着いたとたんに元気を取り戻し、帰るころには自力でスタスタと歩くようになったという。

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 濱守さんの介助に当たっていた副団長で勇留島ポントロモイ2世の米屋聡さん(59)もこれには「奇跡としか言いようがない」と驚き、元島民の望郷の念の強さを実感したという。

 一方、志発島では西浦泊で各地区の関係者が居住地跡を視察したが、相泊へ向かう道でロシア側の国境警備隊から立ち入りを拒否され、遠回りした結果、時間が足りずに相泊関係者の居住地跡にたどり着けなかった。

 相泊生まれの父・木村芳勝さん(84)と参加した根室出身の落語家で副団長の三遊亭金八さん(48)=本名・木村吉伸=は、「行けなかったことが、今後絶対行こうという気力につながる」とプラスに捉えていた。また、角鹿団長の後継者への思いを受け取り、「次は私が汗を流し、返還運動へエネルギーを注ぎたい」と決意を新たにした。

 相泊生まれの母を持つ副団長の本田幹子さん(61)は、「平地が多い志発島での居住地跡探しは、ほとんど目印がなく、元島民がいなくなれば探すのは難しい」と話し、後継者が実際に島の地形や風土を見ることが大切だと強調していた。

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