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『日本には領土問題が存在するが、ここには存在しない』 イワノフ大統領特別代表が色丹島で会見

北方四島の話題

 サハリン・インフォ2019/2/28

クリル諸島に敷設された光通信回線の開通式に出席するため色丹島を訪れたセルゲイ・イワノフ大統領特別代表が島内の文化の家で記者会見を行い、ロ日関係についてのジャーナリストからの質問に答えた。以下はその概要。

●…自慢したくないが、私が初めて島(択捉島)を視察した後、クリル社会経済発展計画がスタートした。私はその時、国防大臣だった。その時目にした島の状況に衝撃を受けた。私はロシアのあらゆる地域を歩き、世界の約60カ国を訪問して、いろいろものを見てきたが、これほどひどい状況は見たことがなかった。

●…択捉島のぺトレル空港(天寧)は、とりわけ衝撃的だった。この空港はカミカゼ特攻隊を離陸させるために日本人が造ったものだ。それから60年間、私たちのパイロットはどうにか滑走路に着陸してきた。それは空母の甲板に民間航空機を着陸させるようなものだ。島にはアスファルト舗装はなく、桟橋さえも整備されていなかった。そんな状況で人々はどうやって暮らしていたか—それは思い出したくないほど酷いものだった。時がたって、択捉島にヤースヌイ空港が完成した。その式典に出席した私に、地元の女性が「いま、あなたはアスファルトの上を歩くことが出来る」と話しかけてきた。

●…社会インフラの整備を含めて今日、島々は根本的に変化した。医師や教師などの専門家がやって来る。彼らには住宅が提供される。クリル諸島の開発のために国家から前例のない予算が投下されている。色丹島でも2年後にはアスファルト舗装の道路が実現するだろう。しかし、食糧品はまだ高いということも事実であり、遠く離れた島への複雑な輸送システムに問題がある。では、あなたはどうするか? 島から出ていくことはないだろう。

●…先日、セルゲイ・ラヴロフ外相は日本との平和条約締結の見通しについて、あまり良くないと述べた。私はセルゲイをよく知っている。この件で、彼と話したことはないが、彼の言わんとすることは想像出来る。

●…もちろん、ロシアと日本の間に平和条約が存在しないことは良いことではない。しかし、その一方で、それほどひどいこともない。私たちは平和条約なしで一年中生きているが、世界はひっくり返っていない。ロ日間には外交関係が維持されている。貿易と経済関係も存在する。ロシアも日本に投資協力をしている。私は、RDIF投資ファンド監査役会の会長をしているので、よく知っている。私たちは文化やスポーツの交流、人道的関係も持っている。日本人は先祖のお墓参りのためこの島に来ている。ビザなし交流は継続しており、問題はない。平和条約がないことは良くはないが、致命的ではない。

●…私たちは60年間平和条約の交渉をしてきた。1956年のロ日共同宣言の後、日本国内には約40の米軍施設が出来た。状況が変化したため、1960年にソビエト連邦はこの宣言を撤回した。平和条約は、署名した国家間の良好な友好関係を前提としている。いま、どのような友好関係について話すことが出来るだろうか?

●…ごく最近、アメリカ軍の将軍の1人が「ロシアが色丹島を日本に引き渡したらどうするか? アメリカ軍の基地をつくる計画はあるか?」という質問を受け、こう答えた。「まだ計画はない」と--。また米軍の別の将軍は、択捉島北朝鮮に対するミサイル防衛システムの配備先として理想的な場所だと語った。彼らは、愚か者から私たちを守ってくれるのだろうか? 愚か者とは北朝鮮か? いや、ミサイル防衛システムはロシアに向けられたものだ。北朝鮮でもイランでもなく、ロシアに向けられている。これは愚か者のためのおとぎ話である。

●…私は時々疑問に思うことがある。日本との間の平和条約交渉を日本とではなく、他の国と交渉することが出来るだろうか? その方がもっと効果的かもしれない。つまり、日本にはいわゆる領土問題が存在している。しかし、ここにはない。私たちには確信がある。出版物のページを埋めるためだけに、領土問題について憶測しているメディアもある。しかし、それらはすべて憶測だ。本当のことは、島の引き渡しについては一切交渉していないということだ。

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質問に答えるイワノフ大統領特別代表(右)