北方領土の話題と最新事情

北方領土の今を伝えるニュースや島の最新事情などを紹介しています。

択捉島の元副市長 詐欺罪で懲役2年の判決 サハリン控訴審

サハリン州地方裁判所は、詐欺罪に問われた択捉島を管轄するクリル地区の元第1副市長オレグ・シュ・シュ・ジョン被告の控訴審で 日、懲役2年とした原判決を支持す判決を下した。被告は公職を利用した詐欺罪で告発され、昨年12月18日のクリル地方裁判所で2年の懲役刑が言い渡された。追加の懲罰として、被告は「一級法務参事官」の階級を剥奪された。(被告は管理部門で長く働き、数年間は地方検察官を務めた)。被告はサハリンの公判前拘置所に送られたが、判決を不服として控訴していた。控訴審で、主な処罰に関する第一審の評決は支持されたが、追加の懲罰については控訴裁判所が取り消した。被告は「一級法務参事官」の階級を回復し、検察官年金を受け取るなどすべての恩恵を享受する機会が得られることになる。(赤い灯台テレグラム2024/4/22)

元副市長は2021年11月、地元の学校周辺の歩道建設工事を巡り、知り合いの建設会社社長と共謀し、当初25万3,000ルーブルだった工事費を17万7,000ルーブル水増しして約43万ルーブルとする契約書類を偽造した。建設会社の社長は、建設中だった元副市長の家の前払い金として、水増しした金の一部を受け取っていた。建設会社社長に罪を認め執行猶予付きの判決を受けた。(sakh.online 2024/4/24)

 

北方領土周辺に福島第一原発「処理水」到達の可能性 サンクト大学などが調査

タス通信は22日、福島第一原子力発電所から海洋に放出されている処理水により、クリル諸島(※千島列島)海域で「放射能汚染リスク」が高まる可能性があるという、サンクトペテルブルク国立大学などによる調査結果を報じた。研究者らが指摘したように、福島からの処理水の大部分は黒潮によって東の太平洋に向かって運ばれ、一部はクリル諸島に到達する可能性がある。モデリングによると、放出から13日後に南クリル漁区(※北方領土周辺海域)に到達し、汚染濃度のピークは 25 日目に発生するという。科学者らによると、汚染粒子の濃度が最大に達する8月下旬から10月下旬までの期間が特に懸念されるという。この時期は、クリル諸島南部(北方領土)海域での漁業にとって潜在的に最も危険な時期となる可能性があるとしている。同大学は今後、中国と共同で研究を行う予定。(sakh.online 2024/4/23)

 

択捉島の「2トップ」市長と地区議会議長は女性

択捉島を管轄するクリル地区の新しい市長に決まったアンナ・ヴィクトロヴナ・オスキナ氏の就任宣誓式で、地区議会のタチアナ・ベロウソワ議長は「満場一致であなたに信頼を寄せた議会を代表して、あらゆる物議を醸す問題において常に私たちの地区住民の側に立ってほしいと願っています。これから非常に困難な仕事が待っていることは承知していますが、あなたが対処することに少しの疑いもありません」と祝辞を述べた。また、サハリン州政府のエカテリーナ・シドリーナ内政局長は「サハリン州政府を代表して、市長の職に就かれたことを心よりお祝い申し上げます。クリル地区の議員と住民は、サハリンの真珠であるこのユニークな地区を率い、最も複雑な問題を自らの手で解決することを確信しています。私たちは皆さんの成功を祈ります」と挨拶した。(「エトロフ・ニュース」テレグラム2024/4/24)

ベロウソワ議長(左)とオスキナ市長

択捉島「トップ」不在、5カ月ぶりに解消 ロシア・クリール地区長にオスキナ氏

(北海道新聞2024/4/25)

 ロシアが実効支配する北方領土択捉島を管轄するクリール地区行政府の新たな地区長が24日、就任した。昨年12月1日に前任のロコトフ地区長が辞職して以降、約5カ月間続いた島「トップ」の不在がようやく解消された。

 地区長の選考は公募制で、地元有識者らによる審査を経た候補者の中から地区議会の投票で決まる。地区行政は多額の負債があり道路整備が進まないなど多くの課題を抱え、選考は応募がなく2回延期されていた。

 就任したのは同島紗那(クリーリスク)出身の女性で、地区の検察庁捜査官や裁判長などを歴任したオスキナ氏。ロコトフ氏の辞任に伴って地区長代行を務めていた。24日の就任式で「私たちの国の小さな一部がより良くなるよう、あらゆる努力を惜しまない」と決意を語った。任期は5年間となる。

 

択捉島 ロシア本土からボランティア医師団来島 5月中旬から無料診療

医療・教育遠征「ロシアのフロンティア」に所属する医師団が5月中旬、択捉島を訪問し同15日から島民の診療にあたる。モスクワの聖アンドリュー財団と地元企業ギドロストロイが費用の全額を負担している。今回で27回目となり、これまでに数万人が診察・治療を受けた。モスクワ、サンクトペテルブルクなどのから心臓、外傷、整形外科、超音波診断、消化器内科、神経内科、泌尿器、産婦人科などの専門医のほかカイロプラクター、運動療法士、心理学者らも参加する。診察はクリリスク(紗那)の地区中央病院で行われ、ゴリャチ・クリュチ(瀬石温泉)、ゴルノエ、レイドヴォ(別飛)で3日間の出張診療が予定されている。(赤い灯台テレグラム2024/4/24)

 

択捉島 紗那—瀬石温泉間の道路は泥と水たまり

択捉島の中心地クリリスク(紗那)と軍の町ゴリャチエ・クリュチ(瀬石温泉)を結ぶ唯一の道路は未舗装のままだ。先週16日、サハリン州議会議員らが現地を視察した後、地元行政府は泥道に土砂を敷くなど対応したが、21日にはあちこちにぬかるみや水たまりが出来ていた。住民は、費やされた資金が無駄になったと嘆いている。どうやら、一時的な措置は長年の問題の解決には役立たないようだ。厳しい予算の中で包括的に対処し、可能な限り合理的にアプローチする必要がある。(citysakh.ru 2024/4/22)

https://youtu.be/KoRF5G5uwlM

 

サハリン—北方四島航路 流氷によるダメージで貨客船修理、5月中旬まで運休

サハリン—北方四島航路で貨客船「アドミラル・ネヴェルスコイ」を運航している「サフパスフロ」社は24日、同船が修理のため4月24日から5月15日頃までドッグ入りすると発表した。冬期間の運航で船体が流氷によるダメージを受けたためとしている。(citysakh.ru 2024/4/24)

 

北方領土が舞台の映画「ジョバンニの島」 脚本の桜井さんと主人公モデルの得能さん、根室で再会

 【根室旧ソ連軍の侵攻で北方領土色丹島を追われる少年らの姿を描いたアニメ映画「ジョバンニの島」(2014年公開)で脚本を担当した桜井大樹(たいき)=本名・圭記(よしき)=さん(46)=東京都在住=が今月、根室市を訪れ、少年のモデルになった同市在住の得能宏さん(90)と11年ぶりに再会した。公開から10年。今はアニメの企画制作で活躍する桜井さんは「ボクにとってこの作品は大きなターニングポイント。お礼を伝えたかった」と話す。(北海道新聞釧路根室版2024/4/23)

ジョバンニの島」で脚本を務めた桜井大樹さん(右)と主人公のモデル得能宏さん。桜井さんが持参した映画のDVDに得能さんがサインした

ジョバンニの島」で脚本を務めた桜井大樹さん(右)と主人公のモデル得能宏さん。桜井さんが持参した映画のDVDに得能さんがサインした

■ビザなし交流や墓参、再開願う/つながり伝える映画、根室の宝

 「世界の映画祭でいろいろな賞をいただいたこの作品ができたのは得能さんのおかげ。10年も前だが、ありがとうございました」。今月1日、出張先の網走から足を延ばし思いを語る桜井さんに、得能さんは「映画を見た、と今も全国の青少年から手紙が来る。ジョバンニの島根室北方領土のつながりを伝えてくれる。根室の宝の一つになったと思う」と感謝の言葉を伝えた。映画制作中の13年以来の再会だった。

 元島民の高齢化で領土返還運動の継承が課題になっており、得能さんは「語り部をするだけではなかなか伝わらない島の暮らしなどを伝えてくれた」と作品の意義を語る。

 映画は色丹島で暮らす少年と、戦後移住したロシア人少女の交流とともに、旧ソ連軍の侵略で故郷を奪われる人々を描く。日本音楽事業者協会(東京)が創立50周年記念で制作し、日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞やフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭審査員特別賞など8カ国13映画祭で15の賞を受けた。

 桜井さんはこの作品で、ドラマ「北の国から」などの演出で知られる杉田成道さんとともに脚本を担当した。島の建物や帽子、靴の色、材質まで描写しようと色丹島出身の得能さんと電話で何度もやりとりした。つらい体験もある中で、「ロシア人少女との思い出やハチミツの味といった明るい記憶もある。映画はそんな得能さんに助けられた」

 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の脚本協力などで経験を積んだ桜井さんは「ジョバンニの島」でプロデューサー業務に初めて挑んだ。脚本に加え、映画制作全体を担う立場で作品の意義を伝えて「(アニメの)絵を描く人だけで千人ぐらいにお願いした」。完成後、領土問題で向き合うロシア・サハリンでも上映。「大きなロシア人男性が赤ちゃんみたいに泣いていた。相互理解といった部分が伝わったのかなと思う」

 この作品が転機となり、プロデューサー業務を本格的に始め、今はアニメ企画制作会社サラマンダーピクチャーズを経営する。

 1日は根室市役所で石垣雅敏市長と懇談。石垣市長は「今は北方領土のビザなし交流も墓参もできない」と説明し「領土問題の報道も減るのでジョバンニの島は多くの人に見てもらいたい。北方領土を学ぶ修学旅行生にバスの中で見てもらうこともある」と話した。

 映画でも描かれた北方四島とのビザなし交流は20年から中断されたまま。桜井さんは「再開してほしい」と語った。(津野慶)